Grok 3の最新機能を探る:xAIのチャットボット
LLM(大規模言語モデル)であるGrok 3の専用モードやベンチマークについて解説します。主要モデルとの競争力や使い方もご紹介します。

2025年2月17日にリリースされたGrok 3は、Elon Muskが設立した企業xAIが開発した大規模言語モデル(LLM)です。以前の記事では、Grok 2.0のリリースとFLUX.1との統合を取り上げました。その基盤を引き継ぐGrok 3は、推論性能の向上、応答時間の短縮、リアルタイムの情報アクセスを実現しています。これまでのバージョンと同様に、Grok 3はX(旧Twitter)に統合されています。
Grok 3の発表時、xAIのCEOであるElon Muskとチームは、Grokを開発した動機について説明しました。Grok 3とxAIの使命は、絶え間ない好奇心を通じて宇宙の真実を明らかにすることであり、その真実が政治的な正しさと相いれない場合もあると強調しました。
Elonはさらに、モデル名の由来についても説明し、「GrokはHeinleinの小説『異星の客』に登場する言葉です。火星で育った人物が使う言葉で、Grokとは何かを完全かつ深く理解するという意味です」と述べました。

図1. Grok 3の発表。
この記事では、Grok 3の機能、パフォーマンスベンチマーク、さまざまなAIモードについて解説します。さっそく見ていきましょう。
Grok 3の進化#
Grok 3の詳細を見る前に、Grokの進化をたどってみましょう。Grok 3に至る主な節目を簡単に紹介します。
- Grok 0:xAI初の研究用プロトタイプです。330億個のパラメーターを使用しています。パラメーターは、モデルが複雑な言語パターンを捉えられるようにする調整可能な重みです。
- Grok 1:Grokの初の公開版で、2023年11月にリリースされました。話題のトピックについて議論できましたが、推論能力には限界がありました。
- Grok 1.5:2024年3月に登場し、メモリと論理的推論が改善されました。性能は向上したものの、リアルタイムの更新や複雑な問題解決には依然として苦戦していました。
- Grok 2:2024年8月に登場し、性能の向上、高度な推論、リアルタイムのデータ統合を実現しました。改善が加えられた一方、ニッチなトピックでは、もっともらしくても不正確な回答であるハルシネーションが依然として発生していました。
Grok 3の開発を支えたテクノロジー#
各バージョンの性能向上に伴い、Grokの開発では、高度な機能とリアルタイム学習を支える、より強力なインフラストラクチャが必要になりました。初期のバージョンには速度と適応性に限界があったため、xAIはAIモデルの高まる需要に応えるべく、より高性能なシステムを活用しました。
このアップグレードの中核を担うのは、xAIが設計したスーパーコンピューターColossusです。Colossusはわずか122日で構築されました。xAIは100,000基のNVIDIA H100 GPU(グラフィックス処理ユニット)を導入し、世界最大級のAIデータセンターを構築しました。その後、92日でGPUの数を2倍にしました。これにより、Grok 3はより多くのデータを処理し、より速く学習し、ユーザーとのやり取りを通じて性能を向上させられるようになりました。

図2. Grok 3はColossusを基盤としています。
また、速度と効率を維持するため、Grok 3はテスト時大規模計算(TTCS)と呼ばれる手法を採用しています。質問の複雑さに応じて計算能力を調整し、簡単な質問には少ない計算リソースを使い、複雑な質問にはより多くのリソースを割り当てます。これにより、リソースを効率的に使用しながら、迅速かつ正確な回答を提供できます。
Grok 3 AIモデルの特化型バージョン#
Grok 3の主な特長の1つは、さまざまなタスクに使用できる特化型バージョンが用意されていることです。それぞれのバージョンがどのように性能を高め、ユーザーエクスペリエンスを向上させるのか見ていきましょう。
Grok 3 Mini:高速で簡単なタスク向け#
生成AIが日常生活の一部になるにつれて、応答に時間がかかりすぎるチャットボットを利用した経験がある方も多いでしょう。Grok 3の軽量版であるGrok 3 Miniは、計算負荷を抑えながら素早く応答し、この問題に対処するよう設計されています。
Grok 3の中核的な機能は維持されているため、リアルタイムの会話で、スムーズかつコスト効率の高い性能が求められる用途に適しています。たとえば、カスタマーサポートのチャットボットや対話型バーチャルアシスタントでGrok 3 Miniを活用できます。
Grok 3 Think:複雑な問題解決向け#
Grok 3 Miniが速度を重視しているのに対し、Grok 3 Thinkは高度な推論と詳細な分析を目的に設計されています。大規模な強化学習によってトレーニングされたGrok 3 Thinkは、クエリを慎重に分析し、バックトラッキングでエラーを修正し、複数のアプローチを検討することで、複雑な問題に取り組みます。
たとえば、複数の手順が必要な数学の問題を解く際、Grok 3 Thinkは問題を論理的な段階に分けて処理します。独自のThinkモードでは、最終的な回答に至る思考の連鎖をユーザーが確認できます。このモードは、数学的証明、コーディング課題、論理に基づく問題などに役立ちます。
Grok 3の各種モードの概要#
Thinkモードに加えて、Grok 3にはさまざまなタスク向けのモードがいくつか用意されています。次に、Grok 3の各モードと、それらが提供する追加機能を見ていきましょう。
高度なAI推論を可能にするGrok 3のBig Brainモード#
Grok 3のBig Brainモードは、詳細な分析と体系的な問題解決が求められるタスクに使用できます。追加の計算能力を活用して複雑な課題に取り組み、標準的な処理を超える精度を実現します。
このモードは特に、速度よりも詳細な推論を優先します。回答の生成には時間がかかりますが、研究、コーディング、複数段階のAIタスクに役立つ、構造化された知見を提供します。研究者や開発者は、正確さが優先されるタスクにこのモードを活用できます。
十分に調査された知見を得られるGrok 3のDeepSearchモード#
Grok 3のDeepSearchモードは、最新のデータを取得し、回答前に情報源を検証することで、モデルが最新情報を把握できるようにします。保存済みの知識だけに依存する多くのAIモデルとは異なり、DeepSearchはウェブから最新情報を取り込みます。そのため、事実や出来事が急速に変化しても、回答の正確性を保てます。
速報を追う場合でも、市場動向を把握する場合でも、新たな科学的発見を検証する場合でも、DeepSearchを使えば、最新の知見に素早く確実にアクセスできます。
静的なトレーニングデータと、絶えず変化する現実世界の出来事との隔たりを埋めることで、DeepSearchはGrok 3の回答の正確性と関連性を高めます。

図3. Grok 3のDeepSearchモードの概要。
Grok 3の性能ベンチマークの概要#
ベンチマークでは、Grok 3はさまざまなタスクで優れた結果を示しています。推論性能については、2025年アメリカ招待数学試験(AIME)で93.3%を獲得し、複雑な数学の問題に取り組む高い能力を示しました。また、大学院レベルの専門家推論タスク(GPQA)で84.6%、LiveCodeBenchで測定されたコーディング課題で79.4%を達成し、複数段階の問題解決やコード生成の能力を実証しました。
軽量版のGrok 3 Miniも優れた性能を発揮し、AIME 2024で95.8%、LiveCodeBenchで80.4%を獲得しました。効率性と高い性能を両立していることがわかります。

図4. Grok 3は主要なベンチマークで有力なAIモデルを上回っています。
Grok 3とChatGPTの比較#
Grok 3は最大の競合であるChatGPTと比べてどうなのか、気になる方もいるでしょう。OpenAIのChatGPTは長年にわたりAI分野を代表する存在であり、新しいバージョンが登場するたびに進化を続けています。
一方、Grokが市場に参入したのは2023年後半で、出遅れた状態からのスタートでした。初期のバージョンは、特にGPT-4と比べて、推論に苦戦していました。
しかし、Grok 1.5とGrok 2でxAIは追いつきました。そしてGrok 3では、大きな進歩を遂げています。実際、競合モデルと比較したベンチマークでは、Grok 3は高度な推論能力と問題解決能力を一貫して示し、詳細な分析と複雑な思考を要するタスクで際立っています。

図5. Grok 3とChatGPTの比較。
Grok 3をめぐる議論について#
Grokの進化に伴い、コンテンツモデレーションと情報の正確性に関する懸念が一部で提起されています。たとえば、有料プランのユーザー向けに提供される新しい音声対話モードでは、さまざまなキャラクターを選択でき、「unhinged(歯に衣着せぬ)」設定では強い言葉遣いと率直な口調が使われます。
このモードは、より制約の少ない会話体験を提供するというxAIの目標を反映していますが、ガイドラインの整備や誤情報の拡散防止について重要な議論を促しています。
同様に、Grok 3はXのリアルタイムデータを利用できるため、未検証または偏った情報を生成する可能性があります。静的データに依存するモデルとは異なり、継続的な更新によってモデレーションが難しくなります。こうした議論は、責任あるAIを開発するうえでの継続的な課題を浮き彫りにしています。
Grok 3 AIの使い方#
こうした懸念がある一方で、Grok 3は広く利用されています。試してみたい場合は、次の方法で機能にアクセスできます。
- チャットインターフェース:質問への回答、コンテンツ生成、コーディング支援などのタスクで、チャットインターフェースを通じてGrok 3を利用できます。
- モバイルアプリ:専用アプリを通じて、iOSとAndroidの両方でGrok 3を利用できます。
- プレミアムプラン:プレミアムプランでは、Grok 3の高度な機能を利用できます。
- API:開発者は現在、Grok 2 APIを利用できます。Grok 3のAPIはまだリリースされていませんが、xAIは近日中に提供予定であると発表しています。
重要なポイント#
Grok 3は、リアルタイム学習機能と特化型モードを備えたLLMです。リアルタイムデータを取得してより正確な回答を提供し、研究、コーディング、問題解決などの分野で優れた性能を発揮します。
コンテンツモデレーションについては議論が続いていますが、改善と適応を続ける能力により、AIチャットボット分野で有力な競合となっています。アップデートを重ねるごとに、Grokはさらに高度になっています。
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