建設機械におけるAI:新しい建設手法
高度なテクノロジーによって建設業界を変革するAIの仕組みをご紹介します。設備をよりスマートで安全、効率的かつ環境に優しいものにします。

建設機械や重機と聞くと、強力な機械を人間が手動で操作する姿を思い浮かべるのが一般的です。しかし、AIの普及に伴い、リスクの低減、安全性の向上、効率化を目的として、自動化される建設車両が増えています。自律走行車両や遠隔操作車両は、建設業界でますます一般的になっています。
たとえばVolvoは最近、建設現場との間で砂、砂利、瓦礫などの重量物を運搬するために特別に設計された、完全自律走行式ダンパーTA15を開発しました。米国労働省によると、建設業界は死亡事故率が3番目に高い業界です。建設分野にAIを導入することで、こうした死亡事故を大幅に減らし、安全対策を強化できます。この記事では、AIが建設機械のスマート化、安全性、効率性を高め、建設業界全体のイノベーションを推進する方法を解説します。
建設機械へのAI導入を理解する#
建設機械や車両は、予測が難しい作業環境や人的ミスによって事故に遭う可能性があります。しかし、AIを活用したシステムは、職場の危険に効果的に対処し、こうしたミスを減らすのに役立ちます。また、建設機械にAIを活用して、機械の稼働を最適化し、性能を監視し、メンテナンスのスケジュールを自動化することもできます。
こうしたイノベーションを可能にする主要技術を詳しく見ていきましょう。
- コンピュータービジョン: 高度なモデル、たとえばUltralytics YOLOv8を使って、機械が視覚データをリアルタイムで分析できます。建設現場の監視、在庫の追跡、作業員の安全装備の確認、顔認識による出勤状況の追跡などに役立ちます。
- モノのインターネット(IoT): IoTはデバイスを接続し、データを共有できるようにします。スマートウェアラブルは作業員の健康状態を監視し、近接センサーや安全センサーは危険を作業員に知らせ、機器のメンテナンスが必要な場合には管理者に通知します。
- 予測分析: 過去のデータと機械学習を使う予測分析は、将来の事象を予測し、潜在的な問題を特定して、スケジュールの最適化に役立ちます。現場での作業中断を防ぐために、天候を予測することもできます。

図1. Ultralytics YOLOv8と姿勢推定を使った作業員の監視。
重機におけるコンピュータービジョンの活用例#
コンピュータービジョンは、建設現場での重機の稼働方法を変え、新しく革新的なソリューションをもたらしています。建設機械における画像や動画分析の可能性を示す、興味深い活用例をいくつか見ていきましょう。
AIを活用した無人計量台#
計量台は、大型車両の重量を測定するためのはかりです。車両が輸送時の安全上の重量制限を遵守していることを確認するため、建設分野で重要です。従来、このプロセスではブースの係員が、車両の入出場時刻、登録番号、積載重量などを手作業で記録していました。しかし、この手作業による方法は時間がかかり、人的ミスが起こりやすく、透明性にも欠ける可能性があります。
無人計量台は、精度の向上、人的ミスの削減、処理の迅速化を実現し、より安全で効率的な運用のためにリアルタイムの監視と透明性を提供します。センサー、カメラ、LEDスクリーン、自動音声案内など、AIを統合したデバイスを使って、プロセス全体を効率化します。トラックが入口に近づくと、自動ナンバープレート認識(ANPR)技術を搭載したカメラが車両のナンバープレートを検出し、登録情報を確認します。登録情報が有効であれば、システムが計量台への進入を許可します。

図2. 無人計量台。
IoT対応の走行中重量計測センサーが、走行中のトラックの重量を測定し、必要に応じて正確に計量できる位置で停止するようドライバーに警告します。重量データは、あらかじめ定められた制限値と照合され、制限内であればドライバーに出口ゲートへの進行を案内します。出口では、ANPRシステムが車両を再確認し、入場した車両と同一であることを確認する一方、コンピュータービジョン対応カメラが不正や異常がないかプロセスを監視します。過積載やドライバーの異常などの問題が発生した場合、システムは監督者に警告し、適切な是正措置を講じます。
AIによるドライバーの居眠り監視#
米国運輸省の調査によると、トラックは貨物輸送に最も多く利用される輸送手段です。トラックのドライバーは、夜間の運転を含む長距離運転をすることがよくあります。建設業界でも同様に、現場間、場合によっては非常に長い距離にわたって重機や資材を運ぶためにトラックが欠かせません。夜間の運転は疲労につながり、事故のリスクを高める可能性があります。調査によると、死亡事故の21%はドライバーの居眠りが原因です。
この問題に対処するため、トラックメーカーはコンピュータービジョンを使ってドライバーの居眠りを監視しています。顔認識、姿勢推定、物体検出などのコンピュータービジョン技術を使って、ドライバーの目の動き、頭の位置、表情を監視できます。たとえば、ドライバーのまぶたが指定された範囲を超えて閉じると、システムがそれを検知して警報を鳴らし、ドライバーに知らせます。ドライバーの居眠り検知システムは、Tataのトラックをはじめとする自動車メーカーで広く使用されています。

図3. コンピュータービジョンによるドライバーの居眠り監視。
自律走行建設車両とAI#
建設現場の作業環境は、特に極端な気温の状況では過酷になることがあります。たとえば、掘削現場では作業員が厳しい暑さにさらされ、効率的に作業する能力が低下するうえ、水分補給や休憩のために頻繁に作業を中断する必要があります。こうした状況でのダウンタイムを減らすため、研究者はブルドーザーやクレーンなどの自律走行建設車両を開発しています。
これらの自律走行機械には高解像度カメラとコンピュータービジョン技術が搭載されており、地形を分析して、傾斜、軟弱地盤、凹凸などの要素を評価します。物体検出を使って人や機器を認識し、障害物を検知すると自動停止することで安全性を高めます。華中科技大学(HUST)の研究者は、山推と協力して、最近、-10°Cという極端な低温でも稼働できる自律走行ブルドーザーを開発しました。

図4. 自律走行ブルドーザーの例(出典: constructionworld.in)。
重機における燃料の最適化#
燃料の最適化は建設会社にとって不可欠ですが、燃費改善の取り組みを実施するのは容易ではありません。燃料価格が変動し、複数のドライバーが建設車両を運転する中で、燃料消費を手作業で管理するのは複雑です。AIを活用した燃料管理システムを使用すれば、プロセスを効率化し、燃料消費を削減できます。
こうしたAI燃料管理システムは、大規模なデータセットを使ってトレーニングされ、複数のルート候補を生成し、最も燃費の良いルートを推奨することで燃料使用を最適化します。また、車両のエンジンコントロールユニット(ECU)と連携し、リアルタイムでギア変更を推奨できます。AIを活用した推奨に従うことで、ドライバーごとの運転パターンを最適化でき、燃費の向上につながります。

図5。トラックへの給油。
建設機械におけるAIのメリットとデメリット#
AIを統合した建設機械には、データに基づく意思決定からリアルタイム監視まで、さまざまなメリットがあります。主なメリットを以下に紹介します。
- 機器の長寿命化:定期的な監視と適時のメンテナンスにより、機械の寿命が延びます。
- ダウンタイムの削減:自動化されたプロセスと予知保全により、機器のダウンタイムを最小限に抑えます。
- 意思決定の改善:データに基づく知見を提供し、リソースや業務をより適切に管理できるようにします。
ただし、建設分野でAIの導入が進んでいる一方で、考慮すべき課題も残っています。
- 初期投資が大きい:AIは長期的なコスト削減につながる可能性がありますが、システムの導入コストは高額で、小規模な企業にとって障壁となる場合があります。
- プライバシーに関する懸念:AIはデータに大きく依存するため、不正アクセスを防ぐには、情報を安全に保管し保護することが重要です。
- 熟練労働者:建設機械にAIを統合するには専門的なトレーニングが必要で、作業員にこうしたテクノロジーの使い方を教えることは、特に厳しいスケジュールの中では大きな課題となる可能性があります。
AIを活用した建設車両の影響#
建設業界ではAIの導入が急速に進んでおり、CaterpillarやDaimlerなどの企業が自動運転トラックの開発を主導しています。2019年、Daimlerは稼働可能な自動運転トラックのプロトタイプを発表し、2027年までに市場投入される見込みです。Caterpillarの自律走行式運搬トラック797Fは、すでに採掘作業の効率化に貢献しています。BHP Group、Rio Tinto、Barrick Goldなどの大手企業は797Fを24時間体制で使用しており、職場での負傷事故ゼロを報告しています。同様に、中国の自動運転トラック企業TuSimpleは、同社のトラックは手動運転より燃費が11%優れていると主張しています。2023年6月、TuSimpleは中国の一般道で39マイルの無人走行を成功させました。
自動運転トラックが建設業界に引き続き好影響を与える中、市場は年平均成長率(CAGR)10%で拡大すると予想されています。AIを活用した建設機械によって安全性と燃費が向上するにつれ、企業はより安全で持続可能な作業環境へと移行しています。
建設車両におけるAIの今後#
AIは建設業界に変革をもたらし、重機をよりスマートで安全かつ効率的にしています。自動運転車両から、燃料使用を最適化し建設現場をリアルタイムで監視するAIシステムまで、こうしたテクノロジーはミスの削減とコスト節約に役立っています。AIの導入コストや作業員のトレーニングなどの課題はありますが、そのメリットは大きいものです。AIによるイノベーションを通じて、建設業界はこれまで以上に生産的で持続可能、かつ革新的になるでしょう。
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